そらもよう
 


2017年03月30日 メンテナンスのお知らせ
「そらもよう」でも折に触れてお知らせしてきましたように、青空文庫に収録されている作品を管理するサーバの老朽化に伴い、クラウドへ移管することになりました。

メンテナンス日時:2017年3月30日 20:00-24:00頃
利用出来ないサイト:作業着手連絡システム(http://reception.aozora.gr.jp)

移管作業中は「作業着手連絡システム」に入る事が出来ませんので、入力や校正をご希望の方も暫しお待ちいただくよう、よろしくお願いいたします。

尚、青空文庫本体(http://www.aozora.gr.jp/)は通常通りご利用いただけます。

2017年01月09日 校正待ちの壁を突き崩せ
青空文庫には、入力は済んだが校正がまだであるために公開できないでいる作品がたくさんあります。校正をする人が現われるのを待っている作品のリストを作ってみました。

青空文庫校正待ち作品検索

青空文庫では、現在、約14,000の作品が公開されていますが、それに加えて6,000近い作品が作業中になっています。これを書いている時点での詳細を見てみると(同じ作者の違う筆名とか作者と翻訳者で2回数えられていたりするので、実際にはこれより若干少ないです):

公開(公開日の予定が決まっているもの):37
校了(校正が終了した段階のもの):467
校正中(ファイルが校正者のもとにあるもの):350
校正予約(校正担当の申し込みを受け付けたもの):68
校正待ち(校正担当者がまだ見つかっていないもの):3071
入力中(まだファイルが入力者のもとにあるもの):1965

という内訳で、入力はできているけれど校正作業が始まる見込みが立っていない作品が最も多いことが分かります。

今回作ったリストでは、校正待ちとなっている作品を抽出し、作者や作品名での検索のほか、作品の長さ(さまざまな理由で機械的に処理できなかったものは「0」になってしまっていますが)や、いつから校正待ちになっているかで並べ替えができるようにしました。リンクで底本情報が記されているページに飛ぶこともできます。青空文庫の活動に参加してみたいけど、何か手軽な作品はないだろうか、などとお考えのかたに見ていただきたいです。

実は、青空文庫では、入力や校正の受け付け作業に使っているサーバーを2、3か月のうちに移転することになっていて、それに伴って、このリストを更新するプログラムも書き換えなくてはならないのですが、まだその準備はできていません。なので、このページは短いお付き合いになるかもしれませんが、どんな作品が舞台裏で出番を待っているか、ちょっとのぞいてみてください。(Y)

2017年01月01日 土地とともにあるパブリック・ドメイン
幾たびもの危機を乗り越えて、再び無事にこの日、2017年のパブリック・ドメイン・デイと20回目の新年がやってきたことを、喜びとともに迎えたいと思います。
青空文庫からは、今日から社会での共有が許されるものとして、以下に掲げる19人の作家の19作品を公開いたします。

 安倍 能成「初旅の残像
 新井 紀一「怒れる高村軍曹
 上田 広「指導物語 或る国鉄機関士の述懐
 大下 宇陀児「擬似新年
 亀井 勝一郎「馬鈴薯の花
 河井 寛次郎「社日桜
 川田 順「枕物狂
 楠田 匡介「
 小泉 信三「この頃の皇太子殿下
 小宮 豊隆「知られざる漱石
 佐佐木 茂索「ある死、次の死
 柴田 宵曲「古句を観る
 鈴木 大拙「時の流れ
 中島 哀浪「かき・みかん・かに
 中野 秀人「第四階級の文学
 野間 清六「百済観音と夢殿観音と中宮寺弥勒
 番匠谷 英一(訳)「ユダヤ人のブナの木
 深瀬 基寛「悦しき知識 ――停年講義(昭和三十三年九月十六日)
 山中 峯太郎「小指一本の大試合

このパブリック・ドメイン・デイにいちどきに公開する数としても、19作品は、年始公開を始めて以来これまででも最大となります。
青空文庫が新年元旦に公有作品を公開し始めたのが1999年、Happy Public Domain Day! と謳いだしたのが2010年で、時を経て年始にPDを考えることはそれなりに定着してきたものと思われます。

ただそのかたわら、ある年を「当たり年」というような風潮が生まれてきたことも事実です。
有名作家が数多くパブリック・ドメイン入りする年だけを言祝ぐというのは、必ずしも本意ではありません。

パブリック・ドメイン・デイは、かつて存在した様々な作家をあらためて見つめる機会でもあります。
有名・無名を問わず、過去に数多くの作家がおり、そして多彩な作品が書かれたことに、誰もが自由に向き合い、想いを馳せることができるようになるのです。

本日ここに揃えられた19作品は、かつてなされた創作という人の営みに再び光を当てたいという、願いの結晶でもあるわけです。

たとえば中島哀浪という歌人は、佐賀で多くの短歌を作りましたが、中央歌壇に出ることはなく、郷土の人として生涯を過ごしました。
そのためその当地では親しまれていますが、全国的によく知られているとはいえず、Wikipedia にも項目は立っていません。

こうした郷土作家たちや各地方の作品を、誰にでも届くどこか青空の下に置けば、少し広い世界に届くかもしれない――こうした「かもしれない」という可能性を許すのも、あるいは切り開くのも、「パブリック・ドメイン」という法的に保証された枠組みなのです。

ある土地と文芸作品とのつながりは、作品によっては切っても切り離せないものです。
作家がある土地を読み込んだ作品は、そもそもその土地にあったものを元にしたのかもしれませんが、逆に(もしくは同時に)その作品がある土地を生成していくという側面もあります。

昨年始めに別府大学で催された「文学への誘い 別府を読む×別府を書く」は、その近代文学における作品と土地との関係について「別府」をキーワードとして、青空文庫に収録されたテキストから探っていく試みだったことが、リンク先のレポートからも窺われます。

さらに、この催しに登壇した現役作家である福永信・澤西祐典・円城塔の三氏は、「別府」をテーマにそれぞれ作品を書き下ろし、その成果はのち同年4月30日、「別府×文学」という特集で大分合同新聞に公表されました。

そして三氏の希望により、明日1月2日にその3作品、すなわち
 福永 信「グローバルタワーにて
 澤西 祐典「湯けむり
 円城 塔「ぞなもし狩り
を、青空文庫に迎えることとなりました。
あるパブリック・ドメインの作品群を背景に、新しい創作がなされるというこのあり方は、かつて富田倫生氏が述べた「四方を満たす水と、泡一つ」の関係でもありましょう。

同様の試みはそのあと昨年12月には富山大学でも行われ、今後も各地で回を重ねつつ青空文庫への継続的な提供も検討されると伺っています。
土地と文学を結ぶ新たな作品を、こうして収録できることを嬉しく思うとともに、三氏の厚意に感謝申し上げます。

同じように自身の作品収録を望まれる方は、昨年2016年の元旦に更新した「青空文庫への作品収録を望まれる方へ」にぜひ目をお通しください。
パブリック・ドメイン作品の入力・校正申し込みとともに、自らの手になる作品・翻訳を届けたいという声にも応えられる青空文庫でありたいと考えています。

去年も、現代を生きる人の手になるいくつもの翻訳作品を受け入れることができました。
ところで先年、拙訳によってスコット・L・モンゴメリ『翻訳のダイナミズム――時代と文化を貫く知の運動』(白水社)を刊行した折、翻訳家の鴻巣友季子氏から次の評を頂きました。

モンゴメリが序章で、作者が死んで一定期間たつと、「作品が公有財(パブリックドメイン)となり、他の国や文化に伝わると、そこでおそらくは新たな語彙を生み出すと同時に、個別の文化・歴史の背景を際立つほどに反映させる」というのは、まさにベンヤミンの唱えた「書物の死後の生と翻訳による後熟」という概念をわかりやすく敷衍したものだろう。作者の死をもってその作品は「通約不可能性」を越えて転移し、多様化していく。(毎日新聞2016年10月30日朝刊)

青空文庫における「翻訳」とは海外の作品を日本語に移すことだけに留まりません。
たとえば「他の文化」とは、この島国の過去の文化から見た現在の文化と読んでもいいでしょう。古典の翻案も、古文の翻訳も、また新しい文化を生み出します。
また「他の国」という言葉から、日本から外国への翻訳を考えてもいいでしょう。折に触れて海外の訳者から「青空文庫のテキストを底本にして訳した」ことをお知らせ頂くこともあります。

そして作品とともに「ある土地」も「後熟」するものなのかもしれません。
昨今の「文豪擬人化ブーム」は、文豪の名前とともに共有された作品やイメージを背景にして成り立っており、その盛り上がりは新たな「翻案作品」とのコラボレーションという形で、各地の文学館にも様々な益をもたらしています。

こうした作品の、さらには土地の「後熟」を保証する後ろ盾になるのがパブリック・ドメインであるなら、だからこそその「可能性」を狭めないような法律のあり方を、心から望みたいと思うのです。

会計については第17期財務諸表が近日中に公開予定で、懸案となっていた管理サーバのクラウドへの移管も、年度内に完了する見通しが立ちました。

この2017年の7月、青空文庫は20周年を迎えます。

できるだけ長く、まずは30周年を目指して、願わくは半永久的にパブリック・ドメインとそこから生まれる文化を支えるべく、本の未来基金からみなさまのあたたかい援助を得つつ、当文庫は本年も、そして今後とも活動を続けて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(U)


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